駆け出しエネルギー技術者桃太郎のノート
省エネその他いろいろな技術を学んでいる、見習い技術者の記録です。 仲間うちの情報交換を目的としておりますが、立ち寄られた方々も楽しんでいただければうれしいです。
技術よりも記憶への信頼
毒物劇物取締法に埋設処分が規定されていることをご存知でしょうか。
法律上の危険物質の処理処分は世間の思い込みと異なっていることは少なくありません。

さて、毒劇物や廃棄物に法律上当たらない、放射性廃棄物の場合です。
発生はしているのに、今なお根本的な解決を見ていません。
そのくせ、原発は推進の方向で政治の世界は動いているようです。

資源エネルギー庁と京都新聞主催のエネキャラバン
「考えよう!ニッポンのエネルギーのこと:放射性廃棄物と地層処分」に行ってきました。
副題の通り、エネルギーそのものではなく、エネルギー転換に伴って発生する
放射性廃棄物のことが話されました。
これは参考資料無しでは厳しいので、詳しく知りたい方は、リンクをご覧下さい。
放射性廃棄物と地層処分のHP」からパンフレットなどがダウンロードできます。

早い話が、放射性廃棄物の最終処分場を確保したいとの思惑から資源エネルギー庁が
動いているのです。で、放射性廃棄物の最終処分って?
エネ庁は盛んに地層処分と言います。埋設処分ではなくって?
どうやら埋設処分にも種類があるようです。
浅地中トレンチ処分、浅地中ピット処分、余裕深度処分、地層処分とあって、
地下300mよりも深い地層に埋めるものを地層処分としているようです。
埋める以外の選択としては、宇宙処分、海洋底処分、氷床処分、長期管理。
これらの比較の範囲では、普通の人間の生息域にもっとも影響が少ないだろうことは
分かるような気がします。
ちなみに私が技術的に疑問に思っていた冷却に関しては、ある程度の年数
地上で冷ましてから搬出するらしいです。確かに当然ですね。
これに浸水の可能性を低くするように容器の周りを粘土などで遮水工事をして
岩盤に埋込むことにするようです。

技術的なことは十分に理解できます。
それでいながら、どうして自治体の誘致が進まないのかとなると、
技術以外のところに課題があるのは明白です。
誘致した自治体に対しては様々な補助金が交付されると資料にもあります。
それが何年続くのかは分かりませんが。
どこの燃料を処理して、どこの処理工場でガラス固化にしたものか、
少々の違いはあるとして、その固化体の放射能が何年で減衰するのか、
必ずしも明確になっているとは思いません。
もちろん大半の人は、持ち込まれる時点でもう嫌だと思うでしょうし、
それが数十年の搬入と数万年以上の残存が続くことを心配する人も
いることでしょう。

数万年経った後、人類は記憶を頼りにできるのか、少なくとも私には
全く分かりません。


全日空のカーボンオフセットの例
J-VERという環境省のカーボンオフセット事業の説明会に行ってきました。
会場には100名は越えるであろう人が出席しているのに対して、事業件数は僅かに8件。
地点で見るとかなりの数になるはずではありますが、それでもこの状態は何なんでしょう。
つまり使いにくい制度ということが見えているので、このままでは拡大は難しいように
思われます。

しかも環境省の室長さんが中座したと聞いて、3時間後、別の講演会場にいたと聞きました。
同じ日に南港ATCでは国内排出量取引制度の講演会が開かれていたのです。
今年異動してきたらしいですが、、、大丈夫かな?

J-VERの方に参加したのは失敗でした。
春にあった1回目の説明会とあまり変わりません。
資料の冊子が立派になったことくらいでしょうか。
この冊子全国での配布を合計すると、間違いなくトン単位のCO2を排出しているのかと
頭をよぎりました。

そんな中一つくらいは聞き所があるものでして、全日空のカーボンオフセット活動です。
あえてANAとはいいません。日本ヘリコプター輸送という大昔も知りません。
会社発表です。

特色は携帯電話からの利用となっていることと、J-VERを利用していることです。
今までカーボンオフセットといえば、外国産のCERを使うことが多かったのです。
なぜかといえば、安いから。日本航空ではCERを使っています。
オフセット単価がキログラム当り10円と5円の違いがありますから、相当に大きいです。
J-VERの特色は何かというと、日本国内の森林涵養に役立っていることです。
実際には排出削減と林業との間は数値で簡単に定式化されているとは言い難いのですが、
重要な排出抑制であり、国土保全には間違いありません。
件数が今のところ、多くありません。10月1日から11月17日までで159件、
12644キログラムですから、ごく僅かの利用に結果として留まっています。

もちろんのことながら、運航機の総重量を軽くすることも怠っていません。
機材を更新していくことはよく知られています。
私は知らなかったのですが、搭乗前にトイレの利用を呼びかけているそうです。

それでもできるだけ全日空を利用しない私のような人もいます。
オフセットに頼るくらいなら、最初から航空機を利用しなければいいのです。
プログラムとしては現状ではよくできている部類に入るので、一企業に留めておくのは
もったいないくらいなのですが、かといって排出の多い活動を促進されても困ります。
心意気は買っても利用はしないこと、これって非情でしょうか。


いろんな薬も食事も多様性あってこそ
来年名古屋でCOP10が開催されますが、それが何か分かっている人は多くないようです。
「今年これからデンマークで開かれるのがCOP15だって聞いたよ。来年がなぜ10なの?」
COPとは締約国会議(Conference of Parties)の略でして、気候変動枠組条約のみで
使われるものではありません。名古屋のは生物多様性条約の締約国会議です。
アメリカ合衆国が参加していないのは共通しています。

時期は少し前になりますが、大阪環境カウンセラー協会主催のセミナーに行ってきました。
講演が3つと力の入った構成になっていました。

まずは環境省近畿地方環境事務所から深田さん。
生物多様性には生態系、種間、種内の3つの多様性があるとまず示されました。
その多様性の恩恵を受けて、私たちの暮らしが成り立っているのだと説明されます。
全ての生命の存立の基盤であり、豊かな文化の根源でもあり、有用性の源泉でもあり、
安全・安心の基礎でもあると。
先週の旅行で見た、薬の開発にしても漬け物の製造にしても京都から遠くない範囲では
ありますが、地域内での生態系が維持されているから可能だったことです。
もちろん、外来のヨモギを得たことは地域外の遺伝資源を獲得することですから、
全世界的な多様性の確保が前提になります。

次いで、絶滅についての話になりました。
生態系のバランスというのは複雑なもので、どこがどのように影響しているのか
簡単には分かりません。生物の一つの種が絶滅したとして、それは生態系のバランスを
崩すことになりますが、実際にどのような影響がどの程度に表れてくるのか
とても分かるものではありません。
もちろん人間も生物の一つの種として、影響を受けないことはありません。

しかしながら現状は厳しいものです。
地球温暖化は言うに及ばず、気候変動に開発活動、物質汚染まで色々な生態系への
経済活動の悪影響が及んでいます。グローバル化する経済の結果、輸出入は激しくなって、
日本は莫大な食料を輸入しながら、耕地や里山の保全を怠っています。
のみならず、ペットその他の輸入をして、飼いきれなくなったものが野生化してしまう
ことも少なくありません。

私たちが生態系を痛めつけながら生きているのは現実問題として、
それを以下に緩和して生きていくかとなると、次のような対策が挙げられました。
*旬のもの、地のものを食べる
*森林認証、漁業認証されたものなど持続可能な商品を選んで買う
*ペットは最後まで飼う
*外に出ていき、自然とふれあう
*自然の豊かさを子どもたちにつたえる

回遊する魚や動物がいるので、食料以外にも日本は世界の生態系ともかかわっています。
1992年の地球サミット以来の課題でもありますから、政治レベルでの論点にも
なっています。COPの他にもハイリゲンダムや洞爺湖サミットでも言及されています。
日本国内では生物多様性基本法が制定されています。

ここまでで、十分長くなりました。
京都大学の夏原教授の話を少し書くに留めておきましょう。
夏原教授曰く、自治体の人たちへの資料を持ち込んできたとのことでしたので、
相当詳しいことまで用意されていたようです。

ウォーターフットプリント、カーボンフットプリントという言葉があるのと同様、
エコロジカルフットプリントという言葉もあります。
これは何かというと、人間が生態系にどれだけ負荷をかけているのかを示す指標です。
仮にこれを「生活のために必要とする生態系サービス供給に必要な面積」としますと、
日本人1人当たり43haにもなるとのことです。
日本人全体では国土の16倍も必要になってしまうとのことです。

自然の林と人工の畑、過去の資源と現在の資源、占有地と共有地など資源を利用とする
人間の思惑が複雑に絡まり合って簡単な解決はなかなかできないものですが、
持続可能な未来を志向しようとの考えが現在の基本になっているようです。

なお、京都でもフタバアオイは上賀茂で採れなくなってしまい、ちまきの笹も
昨年は枯れてしまったとか。京都の里山でも生態系への影響は及んでいるようです。
ましてやより多様性のある湿地帯は保全などろくろくされていません。

生物多様性について動向を知るには日経ECOJAPANの生物多様性特集がお手軽です。
日経エコロジー11月号での特集記事も読めるようになっています。


お漬物も発酵食品
研修旅行の2日目は漬物の店西利の見学です。

近くにあるはずなのに、意外となかなか買わないものです。
だって単身者からすれば十分に高級品ですから。
しかも漬物というのはその店店によって製法が異なるものなのですが、
京都の漬物は本来の漬け方では簡単に真似できるものではありません。
しば漬けは大原で、すぐきは上賀茂で、千枚漬けは御所できちんとした製法があります。
近頃は調味液を吸わせただけのものが氾濫しているので、
本来の味が分からなくなっています。

千枚漬けは現在は発酵させることはまずありませんが、しば漬けもすぐきも発酵食品です。
今時は浅漬けなどの発酵させない漬物の方が多く流通していますが、
冷蔵技術がなかった時代には塩とてもふんだんに使えるものではなかったので、
発酵は食品保存の重要な技術でした。

ならば、京都のことだし、老舗を見学した方がいいのではないかという疑問が出るのは
当然です。西利は昭和の創業、先の戦が応仁の乱という京都にあっては
とても老舗には当たりません。
先日の日本新薬と同様にむしろ古くからの技術も継承しながら新分野に応用していく
新興企業としての側面が強い会社だと思います。

ラブレ乳酸菌の漬け物をこの会社が出しています。
いまや植物乳酸菌とやらで大手食品会社がテレビコマーシャルを売っていますが、
別に植物性だろうが動物性だろうが乳酸菌の機能や効能に顕著な違いはありません。
ただ、財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターが見つけてきた、その菌種で漬けてみたらと
岸田博士から提案を受けて作ってみたところ、漬け物としても製品になったということで
本格的に製造することになったそうです。
なお、パストゥールと名前がついていますが、京都の研究所です。

この会社もやはり近代化にあわせていろいろ考えざるを得ないこともあったそうです。
洛西だけに工場があって、山城丹波や近江などの野菜だけを使っていただけの頃は
まだしも、京都府の産業振興策で工場の進出を持ちかけられた時には相当に困惑した
そうです。丹後は日本海側で洛中とは気候も全く違うところですし、相当の遠隔地です。
最終的に当時の社長が決めたということですが、進取の気概があってこその決断でしょう。
個人的にはこの工場の野菜屑や排水の処理、堆肥化なども関心があります。

さて、社長の講演も終わって試食です。
切って間もないだけに色鮮やか、雑味もありません。
発酵の有る無し合わせて8種類が提供されました。
ラブレ乳酸菌を使ったというすぐきは名前では注目を集めますが、
やはり酸味とくせがありますので万人受けとはいかないようです。それ以前にすぐきは
私も含めて食べ慣れている人が全国規模では少ないのではないかと思います。
他のものは野菜の甘みが直接伝わってきました。
「御所では贅沢に昆布を使って」という社長の言葉もありましたが、
昆布を大量に使う大阪との時間軸の違いも面白いです。
そう聞くと紅白の千枚漬けは相当に贅沢に思えます。本当においしかったです。
いまではこれらの漬け物は高島屋、小田急などで関東地方でも買えます。

なお今時の漬け物の製法が知りたい方は、漬け物ポータルサイトをどうぞ。


温室の中も外もハーブだらけ
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(2004/04/14)
今野 緒雪

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講堂脇の古い温室、というフレーズを思い出しながら見ていたのは、温室内外の薬草です。

技術士会近畿支部食品部会は東京の食品技術士センターと合同の研修旅行です。
もっとも私は日帰りを繰り返すまでのことです。
1日目は日本新薬の山科植物資料館です。
おおいしくらのすけ。。。いえ、なんでもありません。

製薬会社もいろいろありますが、老舗には生薬の扱いに慣れているところが多いです。
この会社は大正期の創立なので老舗とはいいがたいのですが、薬種の販売から
有効成分からなる薬の販売へと見事に転換した典型的な事例です。

この会社、何が有名かというと「サントニン」です。
「サントニンって知ってる?」と言われましたよ。
名前はともかく、見たことはありません。飲んだこともないでしょう。
虫下しの薬らしいです。
古代の話を書いた時には書きませんでしたが、その欠点として寄生虫の罹患率が
高かったのです。農耕文化の罠にはまった結果、不利益を被ることもありますが、
その一つなのです。
日経ビジネスオンライン(会員制)にも先進国ではなぜ、少子化するのかという記事で一つの解釈が
示されています。
完熟堆肥を作るのであれば、発酵熱で寄生虫卵を死滅させられますが、
余裕のない時にそれを期待するのは難しいです。
戦争をしてしまったがために、ますます衛生状態は悪化してしまいました。

さて、昭和時代。
日本では寄生虫に効く薬を探し求めていました。
昔からヨーロッパではヨモギの一種に薬効があることが知られていましたが、
どこにでもある種類ではありませんでした。
当時は帝政ロシアでシナヨモギが得られましたが、当然ながら輸出制限がかけられました。
そのために他の種類のヨモギを探すことになります。
日本新薬がヨーロッパ原産のヨモギを調べると薬効があることが分かり、
当時の会社の所在地の京都の壬生にちなんでミブヨモギと名付けたそうです。
数年後に山科試験農場を開設して山科2号の開発、戦後になってパキスタンの
クラムヨモギの導入と相次ぐ交配でサントニンの含量の高い品種を開発してきました。
サントニンはまことにいい薬でした。
いい薬だったが故に、寄生虫は激減して、今では薬を必要としなくなり、
製造停止になってしまいました。

それ以外にもいい薬となりうる可能性のある植物はあるかもしれません。
そのため、今も尚山科では多種多様の植物を蒐集しているのです。

いかにも薬効がありそうなナス科やシソ科は当然としても、アロエ科、ショウガ科、
シキミ科、マメ科、キク科、それに果樹に近いバラ科ミカン科なども。
蕾、檸檬に籠女、じゃなかった、白檀も。
植物関係の有効成分となるとテルペン類が多くなりそうですが、
これだけたくさんあると植物間で影響はあるのでしょうか。
アレロパシーで雑草が生えなくなっているところもありました。

場内は本当に有感無感の香りが漂っています。
時々副場長さんが匂いを示してくれますが、本当にいいものでした。
市販のハーブティーでももちろん楽しめますが、生の香りは本当に新鮮です。
レモングラスはいいですねえ。他にはバニラやカレーの香りなども。
一般の果樹野菜もある一方で、日本にも数えるほどしかない種類もあります。

この資料館、一般公開はしていませんので、見学を希望の際はお問い合わせ下さい。
その際には植物についての入念な予習をしておくことをお勧めします。




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